SUBSEA DEEP OCEAN EXPLORER
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35.6°N 139.7°E
DEPTH
0m
SURFACE
深海

南極の鉄、運ぶのは氷河でなく深層水

南極の鉄、運ぶのは氷河でなく深層水

西南極の氷河から海へ溶け出す鉄の量は、研究者の長年の予測を大きく下回っていた。氷が解け、その鉄分が植物プランクトンを育て、光合成で二酸化炭素を吸収する——温暖化を和らげる「希望の光」として語られてきたシナリオが、2026年の現地観測によって足元から崩れた。

常識が覆ったのは南極海だけではない。鉄不足を生き抜く古細菌、地中海で見つかった未知の熱水域。2025年12月から2026年3月にかけて相次いだ報告が、深海をめぐる定説を次々と書き換えている。

CO2吸収の4割を担う海で、鉄の出どころが変わった

従来の筋書きはこうだ。融解した氷河水が鉄を海へ届け、それを栄養とする植物プランクトンが爆発的に増える。光合成で大気中のCO2が吸われ、地球の気候がわずかに冷える。南極海は世界の海によるCO2吸収のおよそ4割を担うとされ、この海域の生物活動は気候モデルの中心に置かれてきた。

ところが西南極の観測は、氷河の融解水に含まれる鉄が想定をはるかに下回ることを示した。では海の鉄はどこから来るのか。調査が指し示したのは、海底堆積物と深層水そのものである。主役は氷が解ける表層の現象ではなく、何百年もかけて巡る深海循環だった。気候への影響を測るうえで、見るべき舞台が表層から深層へと移ったことになる。

鉄不足を生き抜く古細菌ニトロソプミルス

その深海で、生命はしたたかな適応力を見せる。海洋の窒素循環を支える微小な古細菌、ニトロソプミルス・マリティムス(Nitrosopumilus maritimus)。水温上昇と鉄不足という二重のストレスを受けても、この生き物は活動を止めなかった。

鍵は鉄の使い方にあった。限られた鉄をより効率よく回すよう体内の仕組みを切り替え、生命活動を保てることが2026年の研究で判明している。窒素を植物プランクトンが使える形へ変換するこの微生物は、海の食物連鎖の土台そのものだ。温暖化が進むほど、その役割は重みを増す。

ミロス島沖、沸騰する海底の新しい熱水域

舞台はエーゲ海へ移る。ギリシャ・ミロス島の沖合で、これまで知られていなかった広大な海底熱水噴出域が見つかった。活断層が走る海底の亀裂から、地球内部の熱とガスを帯びた流体が絶え間なく噴き出している。

潜水調査が捉えたのは、沸騰する流体、立ちのぼるガスの泡、そして化学合成——太陽光ではなく化学反応のエネルギーで生きる仕組み——を頼る微生物が織りなす色鮮やかなマットだった。地中海は調べ尽くされた、という思い込みを、この光景は静かに覆す。地球内部の活動と生命の起源を探る天然の実験室が、人の暮らす海のすぐそばに眠っていた。

三つの発見が突きつける同じ問い

鉄の出どころ、微生物の粘り強さ、噴き出す熱水。性質の異なる三つの発見に通底するのは、表層の常識が深海では通用しないという事実だ。いずれも海の底を直接調べて初めて見えてきた。気候の未来を語る前に、私たちは足元の海をどれほど知っているのか。深海探査が投げかけるのは、その問いそのものである。

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よくある質問

南極の氷が溶けても、なぜ二酸化炭素の吸収は期待できないのですか?
従来の説では、氷河から溶け出す鉄が植物プランクトンを増やしCO2を吸収すると考えられていました。しかし最新の調査で、氷からの鉄の供給量が非常に少なく、その効果は限定的であることが判明したためです。
海水温が上がると深海の微生物はどうなるのですか?
全ての微生物が一様に悪影響を受けるわけではありません。海洋の栄養循環を支える一部の重要な微生物は、温暖化に適応する能力を持ち、限られた資源を効率的に利用して生き延びることが分かってきました。
海底熱水噴出孔とは何ですか?
海底の地殻の裂け目から、マグマで熱せられた海水が高温・高圧の流体となって噴き出す現象や場所のことです。周辺には、太陽光が届かない環境で、化学物質をエネルギー源とする独自の生態系が形成されます。

出典

  • ScienceDaily: A major climate hope in Antarctica just melted away
  • ScienceDaily: Ocean warming may supercharge a tiny microbe that controls marine nutrients
  • ScienceDaily: Scientists stunned by a massive hydrothermal field off Greece
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