SUBSEA DEEP OCEAN EXPLORER
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DEPTH
0m
SURFACE
深海

水深900mで世界初—ダイオウイカの捕食瞬間を映像記録

水深900mで世界初—ダイオウイカの捕食瞬間を映像記録
小笠原諸島父島沖の水深900m、国立科学博物館とNHKの共同調査チームがダイオウイカ(Architeuthis dux)の捕食行動を世界で初めて映像に収めた。全長推定8mの個体が長い触腕を瞬時に伸ばしてハダカイワシの群れから獲物を捕らえる一部始終が、深海用超高感度カメラによって鮮明に記録されている。 ## 2012年の初撮影から越えた「次の壁」 ダイオウイカの映像撮影に人類が初めて成功したのは2012年のこと。当時もNHKとディスカバリーチャンネルが同じ小笠原沖で挑み、生体の存在を確認することはできた。だが「生きた状態で獲物を捕らえる瞬間」の記録は今回が初めてだ。2本の触腕が一瞬で伸び、ハダカイワシを正確に捕捉するその動きは、水中行動生態学の研究者が長年待ち望んでいたデータである。 ## 直径25cmの目が担う二重の役割 今回の映像解析で改めて明らかになったのが、ダイオウイカの眼球の高い機能性だ。直径約25cmという動物界最大級のこの目は、深海のわずかな光を効率よく集め、暗闇の中で獲物の位置を正確に把握するために進化している。研究チームはさらに、この目がマッコウクジラのような大型捕食者を遠距離から感知するためにも機能していると分析した。捕食者でありながら同時に被食者でもある立場を生き抜くための、精巧な光学システムといえる。 ## 赤色光LEDが可能にした「透明な撮影」 撮影成功の鍵は、JAMSTECが開発した深海用超高感度カメラシステムにある。従来の白色光照明は深海生物を警戒させ、対象が逃走してしまう問題があった。今回採用した赤色光LEDはその問題を回避している。深海生物の多くは赤色光を感知できないため、ダイオウイカは照明の存在を認識することなく自然な行動を続けた。「見えない光で見る」という逆転の発想が、世界初記録を生んだ。 ## 全長8mの巨体でも、寿命はわずか5年 [深海巨大症](/articles/deep-sea-gigantism/)の代表例ともいえるダイオウイカは、全長が最大で13m前後に達することが知られているが、その生涯はわずか5年前後と推定されている。短命でありながら膨大な体を育て上げる。しかも繁殖行動はいまだ一度も観察されておらず、個体群の規模すら不明なまま、深海の漆黒に溶け込んでいる生物だ。 ## 「謎」が埋まるほど、次の問いが深まる 今回の映像データは、ダイオウイカ行動生態学の空白を埋める第一歩となる。捕食行動の記録が得られたことで、次に問われるのは繁殖・産卵・幼体期の生態だ。世界中の深海に生息すると考えられながら、その生が始まる瞬間を人類はまだ一度も目にしていない。

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出典

ダイオウイカ深海生物海洋生物小笠原撮影技術