SUBSEA DEEP OCEAN EXPLORER
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35.6°N 139.7°E
DEPTH
0m
SURFACE
深海

南極の棚氷、底から融ける「温水の回廊」

南極の棚氷、底から融ける「温水の回廊」
南極の棚氷の底面に刻まれた長い溝が、暖かい深層水を氷の奥深くへ引き込み、内側から氷を削っていた。安定しているとされてきた東南極でも確認されたこの「底からの融解」は、現在の気候モデルが計算に入れていない。海面上昇の予測が、これまで考えられてきた数値を上回る可能性が浮上している。 棚氷とは、陸の氷床が海へせり出して浮かんだ、厚さ数百メートル級の氷の板である。それ自体が融けても海面はほとんど変わらない。だが棚氷は、背後にある陸上の巨大な氷が海へ流れ出すのをせき止める「防波堤」の役割を担う。問題はここにある。 ## 棚氷の底に走る溝が深層水を引き込む 研究者が発見したのは、棚氷の底面に走る細長い溝だった。この溝が、比較的温度の高い深層の海水を氷の内側へと導き、その場に留まらせる「温水の回廊」として働いていた(引用1)。海面に近い冷たい水ではなく、深部の暖かい水が氷を直接なめ続ける構造である。 底から削られた棚氷は構造が弱まり、防波堤としての機能を失っていく。せき止めを失った陸上の氷が海へ流れ込めば、地球規模で海面が押し上げられる。南極氷床がすべて融けた場合の海面上昇は約58メートルに達するとされ、そのごく一部が動くだけでも沿岸都市への影響は計り知れない。 ## 安定とされた東南極まで脆弱だった この脆弱性が、これまで比較的安定と見なされてきた東南極でも見つかった点が重い(引用1)。底からの融解というプロセスは、現在の気候シミュレーションで十分に扱われていない。つまり我々が頼ってきた海面上昇の予測は、この隠れた経路を勘定に入れない、いわば楽観的な見積もりだった可能性がある。見えない場所で進む融解こそ、評価が最も遅れる脅威だ。 ## 大西洋の「ベルトコンベア」も20年弱まり続けた 異変は極域だけにとどまらない。大西洋では、地球の気候を調整する巨大な海流システムが過去およそ20年にわたり弱まり続けているという強い証拠が示された(引用4)。大西洋子午面循環(AMOC)と呼ばれるこの流れは、熱帯の暖かい海水を北へ運び、冷えて深層に沈み、再び南下する地球規模の循環である。 循環が弱まれば、ヨーロッパや北米の気象、降雨量、冬の寒さにまで波及しうる。南極の氷と大西洋の海流。離れた場所で起きる二つの現象が、気候システムの連動を物語る。 ## 数十年の産業漁業が「ダークウェブ」を枯らす 人の活動も海を直接むしばんでいる。ウッズホール海洋研究所(WHOI)の研究によれば、数十年続いた産業漁業が、生態のほとんど解明されていない中深層の魚類を枯渇させてきた(引用3)。研究者が「ダークウェブ」と呼ぶこれらの魚は、海洋食物網での役割すら判明していない。生態が理解される前に資源が消えつつある現実は、海の恵みの持続可能性そのものを問う。 ## 見えない脅威を「見える」ものへ 広大で複雑な海の変化を捉えるには、継続的な観測と開かれたデータが要る。WHOIは探検会社ポナンと組み、極域の貴重な映像を集めて公開する「Ocean Image Bank」を拡充した(引用2)。研究や教育、市民の関心を支えるこの試みは、誰もが海の現実を目にする入口となる。底からの融解のように、見過ごされてきた脅威に立ち向かう第一歩は、それを可視化することにある。次の予測モデルがこの「回廊」を組み込めるかどうかが、未来の精度を左右する。

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よくある質問

南極の棚氷が底から溶けると、なぜ海面上昇につながるのですか?
棚氷自体はすでに海に浮いているため、これが溶けても海面は直接上昇しません。しかし、棚氷は陸上の巨大な氷床が海に流れ出すのをせき止める「フタ」の役割を担っており、このフタが弱ると氷床の流出が加速し、地球全体の海面を上昇させる原因となります。
大西洋の海流が弱まると、日本にも影響はありますか?
大西洋の海流(AMOC)の変化は、主にヨーロッパや北米の気候に直接的な影響を与えます。しかし、地球全体の気候システムは相互に関連しているため、世界的な異常気象の頻発などを通じて、間接的な影響が日本に及ぶ可能性は否定できません。
「ダークウェブ」と呼ばれる魚とは何ですか?
ウッズホール海洋研究所の研究者が提唱した言葉で、マンザイウオ科やクロタチカマス科など、水深200mから1000mほどの中深層に生息し、生態がよく分かっていない魚類を指します。生態系での役割が不明なまま漁業によって資源が減少していることが問題視されています。

出典

  • ScienceDaily: Deep beneath floating ice shelves, long channels carved into the ice appear to trap warmer ocean water, dramatically speeding up melting from below. Even regions of East Antarctica once considered relatively stable may be far more vulnerable than scientists realized. Researchers warn that current climate models may be missing this dangerous process entirely, meaning future sea level rise could be underestimated.
  • ScienceDaily: Scientists have uncovered strong evidence that a major Atlantic Ocean current system tied to global climate is weakening. The slowdown has been detected across a vast region of the North Atlantic over nearly two decades.
  • WHOI: The research focuses on a poorly understood group of larger midwater fishes that the authors call the “dark web,” species, such as pomfrets and snake mackerels.
  • WHOI: Global initiative expands Ocean Image Bank with critical Polar Imagery to advance research, education, and awareness
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