深海1万mでマイクロプラスチック2200個/kg
マリアナ海溝の水深10,890m地点の堆積物1kgから、最大2,200個のマイクロプラスチックが見つかった。中国科学院深海科学・工程研究所の研究チームが有人潜水艇「奮闘者号」で採取したサンプルをフーリエ変換赤外分光法(FTIR)で分析した成果だ。地球でもっとも深い海溝の底でさえ、プラスチック汚染から無縁ではないことが改めて示された。
## V字型の海溝が汚染粒子を「漏斗」のように集積する
海面で発生したマイクロプラスチック(直径5mm以下の微細なプラスチック粒子)が、なぜ水深1万メートルを超える地点まで到達するのか。その大きな要因のひとつが、海溝そのものの地形にある。
マリアナ海溝のようなV字型の深い溝は、周囲の広い海底から堆積物が重力に従って流れ込む「漏斗」として機能する。プラスチック粒子はこの流れに乗り、周辺の海域と比べてはるかに高い密度で海溝底に蓄積していく。
## 深海生物が「バイオロジカルポンプ」で汚染を運ぶ
地形効果だけではない。生物そのものが汚染の媒介になっている点も見逃せない。
海中を漂うマイクロプラスチックはプランクトンや小型魚類に摂取され、排出された糞粒(フィーカルペレット)に封じ込められたまま比較的速く沈降する。これは深海への炭素輸送を担う「バイオロジカルポンプ」と同じ経路だ。「マリンスノー」と呼ばれる有機物粒子もプラスチックを取り込みながら海底へ向かう。今回の調査では、同海域で採取したヨコエビ(端脚類)の消化管からもマイクロプラスチックが検出され、深海の食物連鎖にすでに侵入していることが確認された。
## PET 33%、ポリエチレン 26% ── 日用品が1万メートル下に積もる
検出されたプラスチックの構成は、PET(ポリエチレンテレフタレート)が33%と最多で、ペットボトルや衣類の化学繊維が由来とみられる。次いでポリエチレン26%(レジ袋・包装材)、ポリプロピレン16%(食品容器・キャップ)、ナイロン12%(漁網・衣類)と続く。名前を挙げれば、どれも日常生活で当たり前のように大量消費される素材ばかりだ。
## 添加剤・有害化学物質の蓄積という次の問題
プラスチック粒子の物理的な混入だけでなく、化学物質の問題も研究者が注目する領域だ。製造段階で添加された可塑剤や難燃剤、あるいは海水中の残留性有機汚染物質(POPs)をプラスチックが吸着して深海へ持ち込む可能性がある。これらが深海生物の体内にどう蓄積し、長期的にどんな影響を及ぼすかについては、現時点では十分な研究が行われていない。
研究チームは「深海は地球のプラスチック汚染の最終的な集積地になりつつある」と警告する。かつて人間活動の影響が及ばないと信じられていた空間が、今や陸上廃棄物の終着点として機能しているとすれば、次の問いは汚染の監視体制をいかに構築するか、そして深海生態系への長期リスクをどう科学的に評価するかだ。
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出典
- 中国科学院: マリアナ海溝におけるマイクロプラスチック汚染の研究
- Marine Pollution Bulletin: 深海環境におけるプラスチック汚染